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インスペクション業者選びで失敗しない6つの確認ポイント

ホームインスペクションの背景


平成21年に、住宅市場の大半が中古住宅である米国などで行われているホームインスペクションを日本で普及させるために、NPO法人「日本ホームインスペクターズ協会」が設立しました。
「日本ホームインスペクターズ協会」設立から9年後の平成30年4月に、宅建業法が改正され
①媒介契約時に建物状況調査(=ホームインスペクション)を実施する者のあっせん
②重要事項説明書・契約書における説明・記載事項の追加」
が盛り込まれました。
この改正により、皆さまは取引の現場で必ず建物状況調査(ホームインスペクション)という言葉に触れることになりました。

国交省は平成29年にホームインスペクションの担い手である既存住宅状況調査技術者(=ホームインスペクター)の認定制度を設けました。
この制度により、40年以上の歴史を持つ米国並みの2万人以上のインスペクターが講習を受けただけで誕生いたしました。

ホームインスペクションの現場で起きていること


<不動産屋さんのホームページに実体験が書き込まれていましたので紹介いたします>
インスペクションに対して怒りを覚えた経験を紹介
私の経験を1つ紹介します。

インスペクションを行った結果「雨漏りの可能性があります」と報告書に記載されたことがありました。診断を行った担当者さんへ話を聞くと、建築時についた染みが残っているのかもしれないし、少し前の台風で雨風が巻き上げられて吹き込んできたかもしれないし、雨漏りかもしれない。とのことでした。

売主さまが「雨漏りなら責任を持って補修をしてから引渡をしたい」と申し出てくれましたが、インスペクションを行った会社からは、工務店の紹介、補修方法や見積もりの提示もできないと言われました。

インスペクション会社と工務店の癒着がアメリカで問題になったとはいえ、住宅の素人に報告書だけ渡し、あとは自分で工務店などを探して補修を依頼してほしいという姿勢は、プロの仕事としてはあまりにも無責任だと感じられました。売主さまも同じ気持ちだったようで、怒っているというよりも呆れているようでした…。

仕方がないので、現場近くに事務所がある雨漏り診断士に見てもらったら、「こんなの雨漏りじゃない。オレに何を補修しろって言うんだよ?」と言って帰ってしまったそうです。
(中略)
売主さま・買主さまのどちらも不安が残り、私と大手仲介会社の担当者は混乱させられました。本当に、これでいいと思っているのだろうか…(怒)
(不動産売却スペシャリスト/株式会社麻布ハウス ホームページ 2018.12.30より)

<当事務所への相談事例も紹介いたします>
築24年のさいたま市の物件を検討している方からこんなお電話がありました
『フラット35の適合検査で、基礎の幅5mmのひび割れで不適合判定を受けたんですが、そちらは基準に適合させる工事はできますか?』と

耐震は当社の専門分野ですので症状にあわせた補修方法を提案できますので、ひび割れの写真や図面などをメールで送っていただき確認してみると、この物件は売主側によるホームインスペクションが実施(フラットの適合証明技術者とは別)されていることが解りました。
しかし、その報告書には“明らかな不具合”と記載されているだけで、判定基準0.5mmの10倍ものひび割れについては何のコメントもありません。
これでは買主は買って大丈夫な建物なのか?永く住めるのか?不安になります。

ひび割れについて意見を求められましたので、専門家として確認しておくべき内容など諸々アドバイスしましたが、結局この物件は購入見送りになりました。
インスペクターは中立的立場であり、決して不動産会社の営業妨害になるような『買わない方が良いですよ』という類の言葉は厳に慎まなりません、もちろん今回も言及していませんが、この物件は地盤調査を行わないと安心できないと思いますので賢明な判断だったと思います。


実はこれば外れのインスペクターに当たった訳ではなく一般的なインスペクションです。
前置きが長くなりましたが、
では、どんな基準でインスペクターを選べばこのような結果にならないですむかを考えてみましょう。

業者選びで失敗しないための6つの確認ポイント


[check]1.経験と実績が豊富か?
もしもあなたが悪徳リフォーム詐欺被害に遭ってしまったら、どんな弁護士に相談しますか?
テレビやラジオで「過払い金請求」のCMでよく名前を耳にする弁護士事務所ですか?
違いますよね?リフォーム詐欺や欠陥住宅問題が得意な弁護士ですよね?

弁護士と同様に建築士にも専門分野や得意分野があります。
建築士の主たる業務は「設計(意匠、構造、設備など)」「工事監理」ですが「新築」「中古(リフォーム)」の別、また建物も「戸建」「マンション」「非住居その他」、構造も「木造在来」「2×4」「鉄骨」「鉄筋コンクリート」と、業務内容も扱う構造も多種多様です。

ニッチな分野の検査業務ですが、どのようなケースがあるかというと、
新築住宅については「瑕疵保険の検査」「住宅性能評価の検査」といった制度上の検査や、「欠陥住宅予防」のための任意の検査などがありますので、実務経験がある建築士は一定数います。
一方中古住宅の場合は、ホームインスペクションを除くと、居住者が自宅の検査を受けるケースとして「耐震診断」かごく一部の業者が行う「リフォーム前のインスペクション」に限られますので、中古住宅検査の実務経験がある建築士はほんの一握りです。

また同じ検査業務でも、新築と中古住宅では求められるスキルは全く異なります。
新築住宅の場合は不具合を指摘すれば、施工会社が手直しを行いますので、必要なのは施工管理の知識と不具合を発見する観察眼です。
一方中古住宅の場合に必要なのは、劣化事象や不具合の発見にとどまらず、「生じた原因」「建物への影響」「補修の必要性の有無」「補修の大よその金額」などをアドバイスできる知識です。これは新築検査では得られないものです。
*実績がPRされていても大多数が新築住宅ということもありますので注意が必要です

ということで最優先ポイントは、
インスペクションを依頼する建築物の“中古住宅”における検査実績の確認です。


[check]2. 補修の知識と実務経験を持っているか?
中古住宅の場合、ほとんどの方が入居前に「設備交換」「内装」「外装」などのリフォームを行いますので、物件価格+リフォーム費用が総予算となります。

築年数がそれなりに経過している場合は、大小何らかの劣化事象や不具合はありますので、「補修やメンテナンスにいくらかかるのか?」が解らないと予算内に収まるのか?判断が付きません。
しかし補修の知識・実務経験のないインスペクターの場合「補修の必要性の有無」や「補修の大よその金額」についてアドバイスできませんので、物件購入後に物件価格は安かったけどその後の補修費用が思ったよりも高額になり結局高い買い物になってしまった・・・・
ということにもなりかねません。

またそもそも「「生じた原因」「建物への影響」が曖昧では、購入して大丈夫か?判断できません。

そのような失敗をしないために、第2のポイントは、
劣化事象や不具合があった場合、補修についてのアドバイスはあるか?の確認です。
「ホームインスペクターの第三者性」をことさら強調している業者は補修については基本的にノータッチですので注意が必要です。


[check]3. 調査の範囲は?
皆さまはホームインスペクションでどこを調査して欲しいですか?
答えは“見えないところ”だと思います。
1に「床下」(シロアリ害、腐食、水漏れ、欠陥がないか?)
2に「屋根裏」(雨漏り、欠陥はないか?)
そして
3に「屋根」(割れなどの不具合はないか?)ではないでしょうか?

床下と屋根裏に関しては「既存住宅状況調査技術者・講習テキスト」では「点検口等から覗き込んで、ライト等を照射して目視可能な範囲とする」となっており侵入調査は求めていません。
多くのホームインスペクション業者はオプションで侵入調査を行っていると思いますが、侵入調査を行ってもらえるか?は確認が必要です。

埃まみれになる覚悟と気合で何とかなる「床下」「屋根裏」とは違って厄介なのが「屋根」です。
1階の下屋根については2階の窓などから見ることができますが、2階の屋根は簡単ではありません。 *屋根は1階と2階では傷み具合が異なります。

ということで第3のポイントは、
『床下と屋根裏は侵入調査を行ってくれるか?オプションになっている場合はインスペクションの合計はいくらになるか?』 そして『2階の屋根はどのように検査するのか?』の確認です。
「講習テキスト」では「勾配屋根や通常の手段で登れない部位については双眼鏡を用いて確認する」とありますが、双眼鏡ではズレ・欠けは判別できても、スレートのひび割れは見えませんし某メーカーのスレート材は吹き替えが必要なほどボロボロ(層間剥離)になっているケースがありますがそれも見落とす可能性が大です。


[check]4.報告書の内容は?
ホームインスペクションの結果をどこでどのようにして説明を受けるのか?また報告書はどのようなものか?も重要なポイントです。

ホームインスペクションの結果は現地で説明を受ける場合がほとんど(売主さんが居住中の場合はこの限りではない)だと思いますが、記憶は時間とともに薄れていきますので、報告書が重要になってきます。
当事務所の場合ですが、インスペクションで撮影する写真はおよそ300枚、そのうち報告書に使用するのは150~200にも及びます。
特に劣化事象・不具合箇所の写真が何処を写したものかが判るようになっているか?
そして前述したように「生じた原因」「建物への影響」「補修の必要性の有無」の記載があるか?確認が必要です。 *「補修の大よその金額」については要望があればで結構だと思います。

報告書提出は別料金となっている業者もあるようですので、第4のポイントは、
『料金の中に報告書の作成は含まれていますか? (ホームページ上にサンプルを用意していない場合)報告書のサンプルを見せて頂くことはできますか?』の確認です。


[check]5.既存住宅瑕疵保険登録事業者か?
ホームインスペクションは目視および測定器等を用いての非破壊検査ですので、壁の中などの見えない箇所の瑕疵(欠陥)などは発見できない可能性があります。
100%の検査は不可能であることより、
契約書の約款・重要事項説明書には「本契約書に基づく以下の判定または保証は一切行いません
(1)瑕疵の有無の判定(2)瑕疵のないことの保証」の文言が入ります。*講習テキストより

スキル不足による見落としも含めて、中古住宅の瑕疵について保証をするのが「既存住宅瑕疵保険」になります。
この保険の加入者は、買主ではなく検査事業者(インスペクター)になりますので、通常のホームインスペクションではインスペクターは結果について一切の責任を負わないのに対して、瑕疵が発見された場合は検査事業者が補修を行わなければならないという大きな責任が生じます。
中古住宅の瑕疵担保責任は免責かせいぜい3ヶ月程度が一般的ですので、別途保険料等が発生しますが加入するメリットは大きいです。

また築20年超の戸建の場合住宅ローン減税の対象外ですが、「既存住宅瑕疵保険」に加入すれば対象になります。
ホームインスペクションを行ううえでの必須項目ではありませんが、責任を持って検査事業に取り組んでいるか?の指標となりますので、第5のポイントは
『既存住宅瑕疵保険登録事業者か?』の確認です。


[check]6.(一社)日本建築防災協会の耐震診断資格者か?
耐震診断の実務を行う建築士が取得する資格であり、多くの自治体で耐震診断の助成制度を利用する際に、本資格の所有が条件になっています。

耐震の実務を行っている建築士は一般のインスペクターに比べると、構造的な知識や基礎のひび割れなどの構造的な劣化・不具合に対する知識が豊富な傾向にあります。

阪神淡路大震災を受けて平成12年6月1日に建築基準法が改正されていますので、特に建築基準法改正前の住宅を検討する場合は、耐震診断の実務を行っているインスペクターがお勧めです。

また築20年超の戸建の場合住宅ローン減税の対象外ですが、「耐震基準適合証明書」があれば対象になります。
ホームインスペクションを行ううえでの必須項目ではありませんが、構造的な知見が豊富か?の指標となりますので、第6のポイントは
『耐震診断資格者か?』の確認です。

まとめ


いかかでしたでしょうか?
ホームインスペクション事業者のホームページには、それぞれの考えるインスペクター選びの基準がたくさん書かれていますが、初めて目にする情報が多かったのではないでしょうか。

その理由は、
①新築検査の視点と中古住宅検査の視点の違い
②「物件探し」→「契約」間のごく一部にしか携わらない建築士の狭い視点と、建築士事務所&建設工事業&宅地建物取引業として「契約・引き渡し」→「リフォーム」→「入居」→「その後」まで携わる(実際に住んでからの状態も教えてもらえる)建築士と視点の広さの差です。

ぜひ参考にしていただければ幸いです。

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